十三鬼穴考06
補足として鍼灸大全に関して少々。
簡単にその成り立ちを纏めると徐鳳という人が1439年、明の時代の初期に編纂した書物だ。編纂者の名前をとって徐氏鍼灸大全と呼ばれる事もある。この成立年代だが、先日の記載に勘違いして書き込んでしまったので訂正を入れておいたので参照されたい。全六巻で構成されていて有名な歌賦の金鍼賦が乗っている事で知られている。
と、知ったかな感じで書いているが自分の手元に無い状態で、調べるのに非常に難儀して書いているのが実情だ。古典の研究の先達である北京堂鍼灸院様のサイトに好意で掲載されているものを眺めるぐらいしか自分は鍼灸大全を読む事が出来なくて、歯がゆい思いをしている。
北京堂様
http://homepage2.nifty.com/pekingdo/hyousi.htm
こちらには学生時代から本当に参考にさせていただいている。十三鬼穴の部分を是非見てほしい。内容に関しては後に見て行きたいと思う。掲載されているのは第一巻の中盤である。抜粋しようとも思ったが原文を掲載されている好意に反すると判断しリンクだけしておく。
http://park1.aeonnet.ne.jp/~pekingdo/taizen1.htm
さて鍼灸大全だが日本に渡来したのは比較的遅くになってからのようで、茨城大学のほうに参考資料が有る。
http://www.hum.ibaraki.ac.jp/mayanagi/materials/edoChimed.html
やはり鎖国の影響が大きく、明代以降の中国の医書が日本に入ってくるには相当の時間を要したようだ。
鍼灸大全に関しての個人的な印象だが、徐々に鍼灸の方法論が複雑化して行く過程が見て取れるように思える。この後の時代に流行する子午流注のように複雑の極みを行くようなものでもないが、補瀉の技法に焼山火や透天涼が書かれていることからも、この時代に様々な工夫がなされてきたのが垣間見れる。極論を言ってしまえば、この時代の鍼灸の技法が記された古典の最高峰は鍼灸大成ではあるが、それでも鍼灸大全を見ておくのは有意義ではないか?と個人的には思えた。反論は有ろうが。
では鍼灸大全の十三鬼穴を他の十三鬼穴と比較してみる。
まず、歌賦という形が取られているのは後の聚英や大成と同じだ。解説の入っている大成の場合は前半部が該当する。こう見ると千金翼方で記された十三鬼穴は明の時代には歌賦として流通していたと推測できる。
細かい部分を見ると、九鍼の部分が間使となっているのに注目してもらいたい。間使鬼市上となっていて、どうにも承漿とチャンポンになっているようだ。北京堂様でも書かれているが鍼灸大全は誤字が多いらしく、どうも十三鬼穴にも誤字が混入していると考えて良さそうだ。むしろ、この誤字や脱字の多さが後の聚英や大成の編纂を促したのだとプラスに考えることも出来るかもしれない。
いかにせん、十三鬼穴は鍼灸大成になって間使の扱いが変化したのだと解る。
補足を入れたら中途半端になったので補井当補合からの推論は次回に回す。
古典を読んだりする上で気になる事や思った事を少しだけ書こうと思う。学生時代から古典は読んでいたが、いかにせん日本語訳されたものは価格が高くて購入には覚悟が必要だった。社会人から針灸学校に入学したので多少の自由になる金銭は有ったが、一冊5000円を軽く超えて行く本を何冊も買うのは身を削る思いだ。事実上、それは現在も同じだ。食事が日に日に惨めになる。
個人的に一番痛手だったのがこの本だ。
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そんなおり、ふと気がついたのが「原書なら安いのでは?」という事だ。中国との貨幣価値の差は当時でおよそ1:7と言われていて、七分の一の価格で本が流通しているのならば七倍買えるではないか!と思った。どうせ日本語訳で読んでいる時も丁寧に追って行く時は辞典片手に原文を追うのだ。労力は大して変わり有るまいと思った。早速神保町に出かけて中国語の本を扱う店に入った。
さすがに七分の一とまでは行かないものの、遥かに安価で手に入る事を知った。
それから実際に中国に出かけたりしたが、そういう機会に複数原書を入手して今に至っている。実際に今参考にしている大成も天津で購入したものだ。他にも前記のようにネットに有志の方がアップしていたりするのを、ありがとうと言いながらプリントアウトしてファイルしている。最近ではこちらの方が多い。やはり古典とはいえ一度データ化してしまうと検索や編集が楽で個人的には重宝する。もちろん、ただ単に読むのも良い。
医書の古典という特殊な分野故に、専門用語が多く有る。それらの処理が一番頭を悩ませるのだが、最近では中国の方でも同じ事を考えている人が増えたらしく、この手の専門用語をデータにして検索が可能な状態のサイトも複数あり、それらを使って調べるのが自分としては一番早く動けていいと思う。それに、専門用語の多くは日本でも使われる事が多く、いわゆる教科書的な範囲からは逸脱するが辞典も存在しているので参考されたい。
- 作者: 高金亮,劉桂平,孟静岩,中医基本用語辞典翻訳委員会
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随分とよけいな事を書いてしまったようだ。