kyougetu2008-12-02

 先日、色々と思うところあって神田に出かけて辞典を購入してきた。今まで使っていたのは普通の日中辞典だったのだが、最近古典を原文のままに読む事が増えたために普通の辞典ではおいきれない部分が出てきてしまったのだ。今まではネットで調べてフォローしていたのだが、そうなるとネットの起動が必須となってしまうし、何よりネットのみの情報では信頼性に欠如する。それ故に専門書が必須となっていた。
 今までも辞典は使ってきた。
 

中医基本用語辞典

中医基本用語辞典

 だが、これは日本語の東洋医学中国医学)を読むときを前提に作られているので、方向性が異なる。使えない訳ではないのだが、もう少し込み入った部分の微妙なニュアンスを知りたいときには使いにくい。そこで、色々調べてみたところ、中医字典というものがあると知り神田の専門書店に出かけた。
 http://www.frelax.com/cgilocal/getitem.cgi?db=book&ty=id&id=SYZY048926
 購入したのはこちらだ。編纂されたのが2001年で少し古い印象も有るが手頃な値段だったし大きさも丁度良いので購入に踏み切った。非常に気に入っている。内容は漢字辞典のようになっており、古典で使われている漢字をひいていくと、その意味やニュアンスが解説されているという案配。例文として古典が引用されているので普通に読むだけでも十文以上に勉強になる。実際、普通に読む機会の方が多いぐらいだ。実際に「針」という単語を引いてみたのを写真に撮ってみたので掲載しておく。
 こちらの字典は2006年度版が通販で購入できるらしいので興味ある人は探してみるといい。
 
 さて、十三鬼穴という言葉を鍵に複数の古典を見て行くことで、鍼灸大成という本を一つの頂点とした比較的後期の古典の内容とそこまでの変遷というのを自分なりに纏めて行く作業も一つの区切りとなってきた。コレからはもう少しマクロな部分を見て行きたいと思う。
 以前記載した部分で個人的に表現が気になっている部分が有り、今日はそこを考察したい。
 http://d.hatena.ne.jp/kyougetu/20081110/1226303431
「この歌賦には症状に対する配穴が書かれている。その中で人中治痲勁最高,十三鬼穴不須饒と書かれていて人中が鬱病の症状に効果があり、治療に十三鬼穴を外す事は出来ないと書いている。」
 この一文に鬱病の症状にと書いたのだが、これは軽率であったように思う。他の日本語訳されたものを参考に書いたのだが改めて痲勁という言葉を調べてみると麻勁という表現の古い漢字であり、これは麻が痺れを伴う運動障害の麻痺であり、勁が強直の意味を持つ事から、どちらかというと脳溢血などを原因とする運動障害を考えた方が良いのではないかと今は思っている。痲という漢字単体では感染症を意味するし、麻も麻疹の病態を意味する事も有るようだが、コレはまた別の解釈だろうと思う。前後の文脈と合致しないからだ。
 さらに、鬱結という言葉からも類推できるように郁という言葉には「何かが大量に集まる」ニュアンスがあり、草木の茂る様子を意味する。それに伴って「集まった何かによる症状」として病状の郁があるので、厳密に現状の医学における鬱と東洋医学が表記する鬱は異なることも重要だと考えている。前者はむしろ虚証の症状を見せる事が多いように感じられる。疲労感や活動時に症状が悪化するといった部分は気虚と考えた方が自然であろうし。